税理士の営業について考える【創業期編】

Company formation
税理士事務所へ新規のご相談で伺うと、
必ずと言って良いほどに次の質問を頂きます。

それは、
「何が一番効果がありますか?」ですとか、
「何からやれば良いですか?」というものです。

税理士先生の今までのご経験によってですが、
営業というものに対する意識は本当に様々です。

例えば、前職の事務所で営業的なことを担当していた、
専属で営業をやっていた、あるいは、
税理士になる前に営業職をしていたといった場合は、
既に営業というものに対しての免疫があるので、
純粋に手法が何が良いかという意味で私に質問をされます。
一方で今までに営業的なご経験が全く無かったという税理士先生の場合は、
文字通り「何が一番効果があるか」ということを聞いてくださっているわけですが、
ご経験のある税理士先生と比べると、効果を出すまでの大変さであったり、効果が出るまでの行動量の意識で、
かなりの差が生じます。

例えばこういうことです。
経験ありの税理士先生の場合
「数をかければ確かに何件かは話を聞いてくれるかもしれないが、
名刺交換時に渡す営業ツールが無いし、ここら辺は大きめの会社が多いので、
効率が良くないかもしれません」

経験なしの税理士先生の場合
「何件回れば契約になりますか?」
経験ありの税理士先生の場合
「ダイレクトメールはやろうと思っています。
この地域であれば年間で数百件の法人設立があるので、
リストを購入すると年間で15万円前後です。
印刷と送料の事も考えて50万くらい予算を割いています。
まぁそれくらいのボリュームだったら自分でラベル印字して発送もやっちゃうので、
最初の数年はこれで営業をして頑張りますよ」

経験なしの税理士先生の場合
「ダイレクトメールは何通送ったら契約になるのですか?」

このようになります。
仮に、「この地域だと1/200でお問合せで、2件お問合せがあったら、
大体1件は決まるといった計算になります」とおこたえしたとしても、
受け取り方が随分と異なるわけです。

前者の税理士先生の場合は、送付にかかる手間隙や労力、コストなども全部分かった上での話しですが、
後者の税理士先生の場合は、そういったものの必要性や労力といったものがお分かりにならない。

ここが難しいのです。

でも、ここの経験の有無と言うものはある先生はありますし、
無い先生はありません。むしろ、無い先生のほうが圧倒的に多いでしょう。

当然の事です。


このように、経験のある無しで私としてもご案内するものが変化します。
ダイレクトメールにしてもメールマガジンや小冊子、パンフレット、ホームページなどなど、
色々なものがあるわけですが、言葉をそのまま捉えてしまうか、
言葉の裏にある「実行力」というところにまで考えが届くのかによってお伝えの仕方も変化します。

今回は、営業経験が無い、もしくはほとんど無い税理士先生に向けて記事を書き進めたいと思います。

まずは税理士先生が置かれている環境を考えましょう!

税理士先生が現在置かれている環境によって、何かの営業活動を行う事で得られる効果と言うものは、
大きく変わります。同じことをやっても得られる効果が違うのです。
例えば、ホームページ。

ホームページなどは費用対効果の高いツールではありますが、
地域によっては競合が多すぎたりしてなかなか効果を実感できないというエリアもあります。
逆にエリアによっては競合する税理士事務所がほとんど存在していない、
もしくはホームページを持っていないなどすることもあるので、
そういうエリアの場合は効果が見込めます。

Googleマイビジネスへの登録などでも差が出ます。

また、エリアそのものが閉鎖性が高いかどうかということも関係します。
環境がオープンで自由競争万歳な地域もありますし、よそ者や新参者を寄せ付けないという
エリアもあります。
これも地域性に関連しますが、
先生が事務所を構えるその地域で、営業上絶対的な強者と言えるような、
税理士事務所(税理士法人)が存在するかどうかです。

もし存在するという場合は、地域そのものを変えた方が良いということもありますが、
企画の立て方によっては大手事務所がカバーできないニッチなジャンルに絞った、
ピンポイントな戦略で進めるということを考えなければいけなくなるかもしれません。
創業期であればやはり資金力がものをいうのは事実です。
簡単に申し上げると、余裕資金がたくさんあればイロイロな事が出来ますし、
必要で十分な準備ができます。例えば、名刺、パンフレット、ホームページの制作。
営業ノウハウやツールの取得など色々なものを沢山仕入れる事ができるわけです。

一方で営業関係のことに対する余裕資金が無い場合は、
名刺ひとつ作るのにもお金を回すことができず、
良いものを揃える事ができないのです。

私なども創業期はお金がほとんど無い状態での創業でしたので、
最初から良いものを整える事ができなかったクチです(苦笑)

環境を把握したら、税理士先生の方針を決めましょう!

まずは、税理士先生が置かれている現在の環境をきちんと把握することが大切であるとご説明をいたしました。
大きく考えると、「地域性」と「競合」です。

先生が開業している(もしくはこれから開業する)事務所のエリアはどういう地域なのか、
競合はどういう事務所が存在しているのかをリサーチするのです。

リサーチの際に役に立つのはやっぱりインターネットでしょう。

都道府県+税理士・会計事務所で検索をしたり、
市区町村+税理士・会計事務所で検索をしたり。

税理士・会計事務所の変わりに、相続、事業承継、記帳代行、決算申告、
確定申告、税務顧問などで打ち込んで検索をかけてみても良いでしょう。

もし、競合する税理士事務所がほとんど表示されない(1ページ目で税理士事務所5件未満のヒット)
であれば、ホームページで検索ヒットされる事を第一目標にして、
とにかくホームページを作ることです。

逆に競合する事務所がビシバシヒットするような密集地域であった場合
(2ページ目まで税理士事務所がみっちりヒット)には、普通に「税理士事務所です」では、
通用しませんので、企画から何か考えなければいけません。

このように、競合状況を確認した上で、どの土俵であれば相見積りになったときに勝てるか?
という視点で考えてみると良いと思います。

相見積りになったときに、常に負けてしまうような形ですと、
その場所で開業をしてもずっと勝てません。
競合する事務所の方が広告宣伝やっていますし、知名度もありますし、
金融機関からの信用も向こうさんの方が高いわけです。

ですので、大きな事務所にはいろいろな所で負けてしまうところがあったとしても、
「でも、うちはここの部分については負けません!」という何かを持つことが大事です。

それが、差別化であったり、独自化といわれるものです。

この方針を、初期の頃にある程度固めておく必要があるのです。

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【著者プロフィール】太田亮児(おおたりょうじ)|合資会社オオタキカク 代表
税理士・会計事務所の営業、マーケティング支援を行う。起業前は東京都内にある税理士法人に勤務してマーケティング業務を専任で手掛けた。2005年にオオタキカクを設立して独立。税理士事務所の個性を活かし各事務所の強みを磨き上げオーダーメイド式でマーケティングの仕組みを作り上げるサポートを行う。2010年に「税理士・会計事務所の儲かるしかけ」を同文館出版より出版し、税理士業界に特化したサービスを展開している。税理士向けの専門紙である税理士新聞(NP通信社発行)への連載記事を手掛けていたこともある。