税理士事務所もSNSや動画を活用すべきか?

創刊50周年_税理士新聞記念特別号に出稿をいたしました

shinnbunn
私が独立をした2005年当初の話。ある税理士先生から、
「税理士事務所でホームページなんてけしからん」とお叱りを受けたことがある。「インターネット上でそのような恥ずべき行為をするものではない」そのような趣旨のことを言われたのだ。

数年前のこと、事務所の息子さんである2代目の税理士先生から連絡があり、「直ぐにホームページを作ってくれ」という依頼を受けた。「以前は親父の事務所だったので自分も強く言えなかった」といったことを言われた。十数年にわたる期間でどれだけの見えざる利益が損なわれていただろうかと考えると、少しゾッとした。
SNS
今度はその2代目の先生から、「今後の税理士事務所の営業は何をすべきか」という質問をいただいたので次のように答えた。SNSや動画を用いたマーケティング、Google口コミの重要性について、これからの税理士事務所が行うべき広報活動についての情報をお知らせした。

すると、「税理士事務所でSNSや動画は馴染まない。Google口コミもこの地域では誰もやっていないので目立ちたくない」といった趣旨のことを言われた。税理士は、ホームページさえあればお客様は勝手に連絡をしてくれる。そこまで必死にPRをしなくても大丈夫。そのようにして、「これから」の取り組みについては全否定された。

2005年の時にホームページを否定されたときは、その重要性をお伝えしきることが出来ず、その後の機会損失を生じさせたことに対して残念な思いをした。2代目からはホームページに対する理解は得られたものの、SNSや動画といった最先端については否定された。それをやらなかったとしても「害」にはならないのだが、機会損失になるということは分かってただきたかった。

将来に亘って事務所を継続させるのであれば

一方でSNSも動画もGoogle口コミも、事務所にとって必要なことであれば、全力で取り組む先生も存在する。事務所の5年後、10年後を見据えて今のうちから体制を整えておきたいといった考えを持っている先生だ。

特に以下のようなターゲット属性を今後事務所でカバーしていく必要があるというお考えをお持ちの先生や事務所は、新たな広報手段について今すぐにでもカバーして行くことを考えて行かなければならない。

・20代~30代の経営者
・30代~40代の相続人
・30代~50代の事業承継をした経営者
・20代~30代の若い求職者
・30代~50代の紹介者、被紹介者

これらの世代の方に事務所の事を選んでいただくためには、新しい時代に合わせた広報モデルの構築を考えて行くことを強くお勧めする。取り組みのスタートが早ければ早いほど、「やっていてよかった」と感じることになる。

従来型の媒体では出来ないこと

新しい広報のしくみでは、従来型の媒体では実現できないことがある。SNSであれば、情報の拡散機能。動画であれば、文字では伝えきれない視覚、聴覚での情報量だ。これらは従来型の媒体では実現することが出来なかった要素だ。

従来型の媒体はそれを使うためにお金をかけて広告を掲載したり、郵送で情報をお届けしたりすることで、見込み客に対して接触を試みるという仕組みであった。これが新しい広報の仕組みでは、媒体の使用そのものにはお金はかからず、その代わり手間と時間がかかるという特徴を持った全く異なる性質を持っている。

従来型のメディアと新しい時代のメディアを組み合わせ、運用することで広告効果を最大化することができる。その方法論を税理士事務所でも考えて行かなければいけない。
【著者プロフィール】太田亮児(おおたりょうじ)|合資会社オオタキカク 代表
税理士・会計事務所の営業、マーケティング支援を行う。起業前は東京都内にある税理士法人に勤務してマーケティング業務を専任で手掛けた。2005年にオオタキカクを設立して独立。税理士事務所の個性を活かし各事務所の強みを磨き上げオーダーメイド式でマーケティングの仕組みを作り上げるサポートを行う。2010年に「税理士・会計事務所の儲かるしかけ」を同文館出版より出版し、税理士業界に特化したサービスを展開している。税理士向けの専門紙である税理士新聞(NP通信社発行)への連載記事を手掛けていたこともある。