税理士事務所が営業活動を行うと生まれる同調圧力とは

Tuning pressure
日経新聞を読んでいたらこんな記事が目にとまった。
「同調圧力断ち自由な発想」「枠にはめる指導 固執」といった見出しで、「黒い下着はダメ」とか「ツーブロックは禁止」といったとある高校の校則が紹介されていた。

「厳しすぎる校則が子供たちの自由な発想を妨げる」といったことが書かれていた。
2021年10月28日 日本経済新聞朝刊より

税理士・会計業界の営業活動は同調圧力の塊

同調圧力というのは、地域共同体や職場などある特定のピアグループ(年齢・社会的立場・境遇などがほぼ同じ人たちで構成されるグループ)において意思決定、合意形成を行う際に、少数意見を有する者に対して、暗黙のうちに多数意見に合わせるように誘導することを指す。(ウィキペディア) 簡単に言うと枠にはめてはみ出しを許さない。という意味だ。

税理士・会計業界にも同調圧力はある。私が感じるのは税理士事務所の広告やマーケティングに関する部分に限ってのことではあるが、同調圧力というのはもの凄く強くある。私は税理士資格を有しているわけではないので、ライセンスをお持ちの先生方が置かれている環境や状況というものについては、どれだけの同調圧力がそこにかかっているのか、先生方のお話を聞いて推し量るしかない。

税理士の営業活動や広告宣伝、マーケティングで感じる同調圧力は、「余所の税理士事務所での実績」「同業の税理士事務所からのやっかみ」「税理士会から目をつけられないか」「税理士仲間との軋轢を生みたくない」「DMなどの手元に残るものはやりたくない」などである。そういうことはやってはいけない。といった無言のルールみたいなものはこの業界に身を置く人間であれば当然理解をしているものであると私は思う。

余所の税理士事務所での実績というのは、取り組もうとしていることと同じことをやっている税理士事務所が存在するのかどうかという話です。これがたくさん存在していれば存在しているほど、取り組んでも大丈夫、安心ということで、税理士同業者である周りの先生がやっているのであれば、うちもやっても大丈夫という発想です。

同調圧力が強くなると問題になるのが、新しいことが出来なくなる、自由な発想が出なくなるというところだ。そのため、多くの税理士事務所では二番煎じ三番煎じ・・・十番煎じ位にならないと「やってみるか!」とならなかったりもする。ただ、私も業界が長いのでそれ自体はある程度は仕方が無いことだと割り切っている部分もある。

ところが、間違った同調圧力というか、時代錯誤の同調圧力が存在しているケースも散見され、それについては危機感を覚える。例えばホームページだ。私が創業をした2005年当初は、まだ税理士事務所でホームページを持つことは一般的ではなかったので、その当時にホームページを持っている税理士事務所はどちらかというと先進的で同調圧力を気にしないタイプの先生が多かったような気がします。

令和になった今、「ホームページを持っている税理士事務所がいるかいないか」「自分の事務所でホームページを作ったら周りの税理士事務所からクレームが来たりしないだろうか」なんて気にする税理士先生はまずいない。まずいないのだが、ごく希に「ホームページなんてけしからん!」ということを仰る税理士先生も存在して、何故か私が叱られるということが起きたりもするのだから不思議だ。過去にあった同調圧力が今もなお同じレベルで税理士業界の中に存在していると思い込んでしまっているのは、大変危険なことだと私は感じるのです。

【著者プロフィール】太田亮児(おおたりょうじ)|合資会社オオタキカク 代表
税理士・会計事務所の営業、マーケティング支援を行う。起業前は東京都内にある税理士法人に勤務してマーケティング業務を専任で手掛けた。2005年にオオタキカクを設立して独立。税理士事務所の個性を活かし各事務所の強みを磨き上げオーダーメイド式でマーケティングの仕組みを作り上げるサポートを行う。2010年に「税理士・会計事務所の儲かるしかけ」を同文館出版より出版し、税理士業界に特化したサービスを展開している。税理士向けの専門紙である税理士新聞(NP通信社発行)への連載記事を手掛けていたこともある。