明日見世の販売手法に学ぶ税理士事務所の営業・マーケティングの切り口

「明日見世(asumise)」から学ぶ営業・マーケティングの新たな可能性

明日見世と税理士事務所の営業
大丸松坂屋百貨店が大丸東京店4階イベントスペースに、ちょっと変わったお店をオープンしました。その名も「明日見世(asumise)」。

「物を売る」百貨店が、売らないスペースで販売するといった一瞬首をかしげる様な取り組みです。 どういうことかというと、お客さんはasumiseに行って、様々なブランドの中から気に入ったものを、QRコードを読み込むことでオンライン購入できるといった仕組みです。普段オンラインで買い物をする場合は写真でしか選ぶことができませんが、この方法だと実物を自分の目で見て触って確かめることができます。

更にはオンラインでは実現できない「人対人」での販売が可能となり、接客経験を積んだ知識の豊富なスタッフから商品の説明をしてもらうこともできるし、ブランドのことをより深く知ることもできます。

D2Cブランドのリアル展開という切り口

購入できる物は、いわゆるネット販売を主としたD2C(Direct to Consumer:自社のECサイトを通じて商品を消費者に直接販売するビジネスモデル)ブランドで、常時20ブランドが揃う充実ぶりです。ファッション、コスメ、生活雑貨と幅広いラインナップで買い物を楽しむことができます。 売り場は白を基調としたシンプルな空間が特徴的で、木目調の陳列台などの温かみも加わり、百貨店の売り場としては全体的にゆったりとしたくつろぎのあるスペースになっています。

D2Cブランドは、多くの人が足を運ぶ百貨店でアピールすることで認知度を高め、先々のブランド運営にも役立てることが期待されています。更に消費者のリアルな反応をフィードバックできるというのも大きなポイントです。 大丸松坂屋百貨店は、この新しい取り組みを通じて得た経験や成果からマーケティングの可能性を広げ、将来的に多店舗展開の導入も検討しているということです。asumiseのコンセプトは、「出会いの循環から新しい可能性を生み出す場」で、正にリアル店舗とコンテンツ双方にとってメリットを享受できる空間といえるでしょう。
asumise店舗

明日見世ストーリーを売る

明日見世D2Cブランド

大丸松坂屋百貨店

大丸東京店4階

紙媒体の販促ツールはどのように変わるのか?

商品の周りには紙の販促物が設置されています。もちろん一式持ち帰ってきました。面白いと感じたのが、FAXで注文できないということでした。従来型の発想ですと、WEBでもFAXでもOK!お電話でも受け付けています!というスタイルを当然思い浮かべるのですが、明日見世はオンライン上での販売に絞っています。そしてほぼ全ての媒体にQRコードが印刷されているのです。

QRコードは、オフィシャルサイトに飛んだり、ブランド商品ページに飛んだり、インスタグラムに飛んだりします。クーポンコードの発行もQRコードです。「その場で売らない」という少し変わったコンセプトは今後のマーケティング概念にも影響を与えそうです。

税理士事務所の営業にQRコードをどう組み込むかを考えてみましょう

さて、税理士・会計事務所はこの明日見世から何を学ぶことが出来るでしょうか?「税理士業務は知識を売る仕事だから明日見世なんて関係ないよ」と考えるのか、「税理士事務所であればどのように応用できるだろうか?」と考えるのか。それは先生次第です。

私であればこう考えます。「販促ツールは全て見直しが必要」ということです。ダイレクトメールであればホームページへの誘導だけではなく、お問合せフォーム、代表挨拶、商品案内、料金案内など適材適所でQRコードを使うことが出来そうです。ダイレクトメールだけではありません。名刺やチラシ、封筒なども検討しても良いかもしれません。当社も次に印刷する名刺や封筒にはQRコードを入れる予定です。 応接室でちょっとの時間待っているお客様にQRコードを読んでいただき、事務所の紹介動画を視聴いただいてみてはどうでしょうか?応接室での待ち時間は微妙に手持無沙汰になるものです。そんな時、「このQRコードを読み込んでください!」とオファーがあったらどうでしょうか。ちょっと見てみるか。となるかもしれません。

さらに、もう少し踏み込んでみましょう。例えば、相続で提携している司法書士事務所さんがあったとします。お客様の中には相続税について困っている方もいらっしゃるはずです。よくあるのがそのような方にチラシを配ってもらうとかパンフレットを渡していただくとかそういうことが考えられます。ここを少し柔軟に考えてみましょう。動画です。「相続税について」とか「相続税がかかるかかからないかの見極め方」とか「ご兄弟間でもめない相続にするための3つのポイント」とか。そういった短めの解説動画を作り、QRコードで読んでいただいて、その場で確認していただく。

相続税がかからないとか、そのような問題が起きないような方であればそれはそれで解決ですし、もしその問題に該当するような方であれば、「今すぐ連絡ください」で良いですよね。とても自然です。 このようにアイデア次第で色々なことが考えられそうです。今後もQRコードの活用方法は深堀できそうな予感がしています。

【著者プロフィール】太田亮児(おおたりょうじ)|合資会社オオタキカク 代表
税理士・会計事務所の営業、マーケティング支援を行う。起業前は東京都内にある税理士法人に勤務してマーケティング業務を専任で手掛けた。2005年にオオタキカクを設立して独立。税理士事務所の個性を活かし各事務所の強みを磨き上げオーダーメイド式でマーケティングの仕組みを作り上げるサポートを行う。2010年に「税理士・会計事務所の儲かるしかけ」を同文館出版より出版し、税理士業界に特化したサービスを展開している。税理士向けの専門紙である税理士新聞(NP通信社発行)への連載記事を手掛けていたこともある。