税理士事務所の新設法人向けアプローチは今が旬?

Company formation
「新しく会社を作る人って今、少ないんじゃないの?」税理士先生に新設法人向けダイレクトメールのご案内などをさせて頂くと、決まってそのような質問が出てくる。現在のような難しい環境で新たに会社を作ろうなんて考える人なんていないのではないか?独立を考える人なんていないのではないか?そのようにお考えになる先生も多くいらっしゃいます。確かに現在が「厳しい時代だ」と捉えるのであれば、新しく独立をする人は減少して、新設法人の数も激減していると考えるのは当たり前かもしれない。

しかし、実際は真逆です。どうやら起業家は今の時代を「厳しい時代」とは捉えていない可能性が高く、むしろ今の時代はチャンスであると考えていると思われるのです。新設法人の数はじわじわと増えています。新設法人のデータリストを扱っている業者さんも設立数は増えているということを言っていましたし、つい先日も日経新聞で次のような記事が掲載されていました。

「新型コロナウィルス禍後の新たな商機を捉えようと、地域で起業熱が高まっている。2021年4~9月の新設法人数は6万6530社と、前年同期比34.6%増加。法人数、増加率ともに半期で見て過去最多となった。全国自治体の6割超にあたる1077市区町村で増えた」
日本経済新聞 2021年11月13日(土)

自治体による新規創業支援が後押しをしている

少しくらいは増えているかもしれないと感じていたという税理士先生でも、想像していたよりもずっと増えていると感じるのではないでしょうか?増加をしているひとつの要因としては、自治体の企業支援充実が追い風となっているということがあるようです。自治体によっては地域の特徴に合わせて事業の立ち上げで200万円を助成できるようにしているところもあるそうです。このような後押しもあって起業しやすい環境が整っているということも、新設法人数が増えていることのひとつの要因と考えられます。

さて、起業家が会社を作った時に頭を悩ませるものは何か?これについても傾向が出ています。日本政策金融公庫総合研究所の2020年度調査で「起業の際にあったらよいと思う支援策(複数回答可)」としても最も多くの起業家が選んだのは「税務・法律関連の相談制度の充実」で59.2%だった。これに続く形で「技術やスキルを高める機会」「同業者とのネットワーク」「事業資金の調達方法」「融資制度」「所得補償制度」「賠償リスクの保証制度」と続きます。

これらのうち、「税務・法律関連の相談制度の充実」「事業資金の調達方法」「融資制度」「所得補償制度」などは、税理士事務所の守備範囲に含まれるお金に関係する課題ではないでしょうか。起業家が抱えているそのようなニーズを捉え、会計事務所が具体的にどのようなサービスを提供して行くのか。起業家向けのサービスラインナップをどのように整備して行くか。そういった視点で税理士事務所のサービス内容を商品化することが大切です。
【著者プロフィール】太田亮児(おおたりょうじ)|合資会社オオタキカク 代表
税理士・会計事務所の営業、マーケティング支援を行う。起業前は東京都内にある税理士法人に勤務してマーケティング業務を専任で手掛けた。2005年にオオタキカクを設立して独立。税理士事務所の個性を活かし各事務所の強みを磨き上げオーダーメイド式でマーケティングの仕組みを作り上げるサポートを行う。2010年に「税理士・会計事務所の儲かるしかけ」を同文館出版より出版し、税理士業界に特化したサービスを展開している。税理士向けの専門紙である税理士新聞(NP通信社発行)への連載記事を手掛けていたこともある。