第45号 顧客ニーズの捉え方

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いま一番、顧客ニーズあるものって何?
この質問。実はかなりあります。「金融機関対策?」「特定業種特化?」「相続申告業務?」「記帳代行・経理代行?」…。税理士業界では、いまこれが最も顧客ニーズがあるものである。といったアプローチの仕方がこの業界は結構多いと私は感じています。人口の推移であったり日々のニュースや社会的な環境変化に即して、「これからはこれが 来る!」といった視点でのアプローチです。広い意味でのマーケティングという意味では正しいアプローチの仕方かもしれません。
しかし、私はこのアプローチの方法には少し違和感があります。目の前にある顧客ニーズを飛ばして、日本全体の市場ニーズに目が行ってしまうと失敗してしまうと私は感じるのです。全国に支店がある大手税理士法人であれば別ですが…。

「市場ニーズ」と「顧客ニーズ」の違い
「市場のニーズ」というのは文字通り市場におけるニーズです。人口が今後どのように推移しているのかとか、市場の経済規模がどうだとか、業種別あるいは業務別の各種データを基にした大枠の方向性のようなものでしょうか。でもしかし、「市場」って誰なのでしょうか?私には顔が思い浮かばないのです。「市場って誰?」って思いませんか?私が考える「顧客ニーズ」というのは、「市場ニーズ」とは異なります。「顧客ニーズ」というのは、顧客=お客様のニーズです。そのままですが、他に表現のしようがありません。お客様からのニーズ(必要性)です。そして、この考えに合わせるのであれば、顧客ではない人(未関与先)のニーズは深く考える必要はありません。顔が思い浮かばない「市場さん」のことはおいておいて、顔が思い浮かぶ「顧客さん」のことを心の底から愛したほうが良いに決まっています。絶対にそうです。
どういうことかと申しますと、競合他社がやっていることは別にどうでもよくて、自社のお客様が「それは別料金を支払ってでもやって欲しい」ということを見つけ出してそれを商品化することに着目するのです。お客様が欲しがっていたもの、潜在的に必要であると感じていたものを聞き出すこと。実はこれが一番費用対効果が高いマーケティングであると私は考えます。
ではその顧客ニーズを聞き出すにはどうしたら良いのか?ということなのですが、ただ単に「何が欲しいですか?」と聞いたとしても欲しい答えは返ってこないでしょう。ニーズと言うのは潜在的なものだからです。一方で顕在化されたものはウォンツといいます。
「経理事務めんどくさい」がニーズだとしたら、「経理代行をしてほしい」がウォンツ。「資金繰りが厳しい」がニーズだとしたら、「借入をしたい」がウォンツです。抽象的な必要性がニーズで具体的な提案内容がウォンツといえます。
お客様の漠然とした悩みを引き出して聴く
お客様が潜在的に抱えていたお悩みや課題が明確になり、それに対して税理士事務所が何か提案、提供できるものがあったとしたら、それを商品化してあげることです。顧客ニーズを捉えたら、具体的な提案を行ってウォンツを満たして差し上げる。さらに、他のお客様でも同様にお困りであったり、ご提案することはできないだろうか?と考えてみると良いでしょう。その時に何件も該当するお客様が存在して、多くのお客様に喜んでいただけ、且つ事務所の売上にもつながるのであれば、そこで提案されたものというのは、とても価値があるサービス・商品であると言えます。ニーズがあるのです。逆に捉えたはずの顧客ニーズが実は1社だけのニーズであって、他のお客様からは必要とされていなかったのであればそれはニーズが無い(少ない)といえます。
お客様が何を望んでいるのか?この質問をお客様以外の第三者にしても、正しい答えが出てくるはずがありません。顧問先様 (お客様)のニーズが何かということをきちんと把握するためには、お客様の声をしっかりと聴くしか方法が無いのです。
・・・とここまでは偉そうなことを申し上げておりましたが、当社は当社でお客様の声を聴いて、「顧客ニーズ」を捉えなければなりません。最近であれば「動画」というのがひとつのテーマとして挙げられます。一口に動画と言っても使い方は色々と考えられます。
これも先生方のお話をきちんと聴いていくと色々なニーズが出て来ます。YouTubeをやりたいのか、あるいはやりたくないのか。関与先様向けの動画なのか、未関与先向けの動画なのか。少し固い税金系の動画なのか、かなり柔らかいQA系の動画なのか。先生や事務所のキャラクター、カラーによってご提案する内容も変化します。

合資会社オオタキカク 代表 太田亮児
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