税理士事務所の二代目・三代目は新規の営業活動で苦労することが多い

Hardship
税理士事務所(税理士法人)において、営業の悩みは尽きることがありません。中にはもともと営業・マーケティング的な資質が強くあり、積極果敢に営業活動に取り組んでいる税理士先生もいらっしゃいますが、なかなかそういうケースは稀なことです。

今回は税理士事務所の二代目、三代目の新規営業活動における苦労というお話をしてみます。これは世の中の税理士事務所では本当によくあるケースなのですが、特に先代の税理士先生が一代で築き上げてきたような税理士事務所でよくあります。

仮に先代の税理士先生を創業者としたとき、営業活動についてはもの凄いパワーを有していたということが考えられます。創業者のパワーが凄い税理士事務所の場合、独立当初は先生ご自身が飛び込みをやったり、ダイレクトメールをやったり、地域の会合、ゴルフコンペ、異業種交流会などあらゆる交流会に顔を出して営業活動を重ねてきたということが少なくありません。まさに超人的な営業活動を日常的に行ってきたというスーパー営業マンであったりするのです。
では、その先代の後を引き継いだ税理士先生が同じような超人かというと、決してそのようなことはありません。むしろタイプ的には全く逆であったりもして、攻めてお客様を拡大するというよりも、既存のお客様をしっかりと守る方に力を発揮する先生であったりします。そのこと自体はよくある形ですし、理想的なバトンタッチの姿なのかもしれません。

ところが、スーパー営業マンであった先代経営者である税理士先生が前線を離れた後、二代目、三代目にあたる税理士先生が、お客様を守るだけではなく、お客様を拡大する必要性に迫られた時に問題が起きます。

創業経営者である税理士先生と二代目、三代目の税理士先生

創業経営者である税理士先生は、裸一貫で事業を起こしたという方ですから、新しく一件のお客様を獲得するために必要となる努力の熱量であったり、かかるコスト(金銭や時間)に対しても一定の理解があります。ところが、二代目、三代目の税理士先生にはそれが無いというケースが多くあります。(もちろん、中にはあるケースもありますが)新規のお客様を開拓する方法が分からないため、広告会社の言いなりになってしまい多額の費用を投じてしまったり、間違った広告予算の使い方をしてしまって苦労をすることになってしまうことが多くあります。

そのため、将来的に事業承継をお考えになっている税理士先生には、次の代を担う税理士先生や従業員さんに小さな営業活動や、マーケティングへの取り組みを何度も経験していただき、顧客獲得の難しさや広告宣伝のノウハウを体験していただくための期間を設けていただくようにお願いをしています。これは早ければ早いほど効果的です。会計事務所の経営においては百戦錬磨の創業経営者である税理士先生からすると、時間がかかるのでじれったく感じられることも多いかもしれませんが、長い年月をかけて鍛え上げるといった向き合い方をお勧めいたします。  
【著者プロフィール】太田亮児(おおたりょうじ)|合資会社オオタキカク 代表
税理士・会計事務所の営業、マーケティング支援を行う。起業前は東京都内にある税理士法人に勤務してマーケティング業務を専任で手掛けた。2005年にオオタキカクを設立して独立。税理士事務所の個性を活かし各事務所の強みを磨き上げオーダーメイド式でマーケティングの仕組みを作り上げるサポートを行う。2010年に「税理士・会計事務所の儲かるしかけ」を同文館出版より出版し、税理士業界に特化したサービスを展開している。税理士向けの専門紙である税理士新聞(NP通信社発行)への連載記事を手掛けていたこともある。