「マーケティングをやれと言われたけど何をすれば良いか分からない」税理士事務所でよくある問題

目次

  • マーケティング業務が見えている事務所と見えていない事務所
  • マーケティング担当者を採用しただけでは成果は出ない
  • まずは事務所としての方針を明確にする
  • マーケティングは経営課題である
  • まとめ
マーケティング担当者の役割_税理士事務所でよくある問題

税理士事務所でマーケティング担当者を任された方から、
「所長にマーケティングをやれと言われたけれど、何から始めれば良いのか分からない」
「ホームページで顧問先を増やせと言われたが、WEBのことなんてやったことがない」
「マーケティングしろと言われても、具体的に何をやるのだろうか」
といった相談を受けることがあります。

実は、このような悩みを抱えている担当者は決して少なくありません。なぜなら、 税理士事務所におけるマーケティング担当者は、税務担当者や会計担当者とは異なり、明確な定型業務が存在しないことが多いからです。月次入力や決算業務、顧客訪問業務であれば、やるべきことは比較的明確です。しかし、マーケティングは「何をすれば成果につながるのか」が見えにくく、担当者自身も手探りの状態になりがちです。

マーケティング業務が見えている事務所と見えていない事務所

例えば、
・DMを定期発信している
・ブログを定期的に更新している
・SNSで情報発信を行っている
・事務所通信を発行している
・メールマガジンを配信している
・セミナーを実施している

といった活動を既に行っている事務所であれば、それらの運用がマーケティング担当者の仕事になります。
しかし、これまで情報発信をほとんど行ってこなかった事務所では事情が異なります。

担当者を任命したものの、
「そもそもマーケティング業務とは何なのか」
という状態からスタートすることになります。

その結果、
「何をすれば良いか分からない」
「何を目標にすれば良いか分からない」
「どこまでが自分の仕事なのか分からない」
という状況に陥ってしまうのです。

マーケティング担当者を採用しただけでは成果は出ない

近年、士業専門のコンサルタントや経営支援会社から、「事務所を成長させるためにはマーケティング担当者が必要です」という話を聞き、一念発起して担当者を採用する事務所が増えています。これは非常に前向きな取り組みであり、事務所の将来を考えた素晴らしい判断だと思います。

しかし、現実には担当者を採用しただけで満足してしまい、
・何を担当するのか
・何を目標にするのか
・具体的に何をするのか
・どのような成果を求めるのか
が明確になっていないケースが少なくありません。

その結果、担当者のやる気や個人の能力に依存した運用になってしまいます。担当者となる方が優秀な方であれば、自発的にマーケティングプランを考えたりできますので、何とか形になるかもしれません。しかし、それは一般的には考え難いです。

マーケティング担当者は魔法使いではありません。

方針も予算も目標もない状態で、
「問合せを増やしてほしい」
「ホームページからの相談を増やして」
と言われても、何から手を付ければ良いのか分からないのが当然です。

まずは事務所としての方針を明確にする

マーケティング担当者が成果を出すためには、 まず経営陣が方向性を示す必要があります。

例えば、
・DMなどの紙媒体を活用するのか
・ホームページやSEOを強化するのか
・SNSや動画発信を行うのか
・広告宣伝費はどの程度かけるのか
・制作物は内製化するのか外部委託するのか
こうした基本方針を決めなければなりません。

さらに、
・何を目的にマーケティングを行うのか
・年間で何件の問い合わせを獲得したいのか
・どれくらいの売上増加を目指すのか
といった目標も明確にする必要があります。
これらが決まって初めて、担当者は具体的な行動計画を立てることができます。

例えば、税務顧問を増やしたいのか。法人か個人か。法人なら株式会社か合同会社か。新設法人か既設の法人か。相続を増やしたいのか。エリアはどこらへんなのか、どのようなニーズに焦点を当てるのか、事務所の商品はどのようなものか。このようなことは事務所の方針としてあらかじめ固められた状態である必要があります。

マーケティングは経営課題である

税理士事務所のマーケティングで成果を出している事務所には共通点があります。
それは、マーケティングを担当者任せにしていないことです。

経営陣が、
「誰に向けて」
「どのようなサービスを」
「どのような方法で届けるのか」
という方向性を明確にし、その実行を担当者が担っています。

つまり、マーケティング担当者の仕事は、ゼロから経営戦略を考えることではありません。
経営陣が決めた方針を形にし、継続的に運用していくことがマーケティング担当者の仕事です。

もちろん、世の中には経営戦略的な業務も兼ねてマーケティング業務を遂行していらっしゃる担当者の方も存在しますが、それは極めて稀な存在であると言え、組織の中心的な存在であると考えられます。

まとめ

「マーケティングをやれと言われたけれど何をすれば良いか分からない」
これは担当者の能力不足ということではありません。 事務所としてのマーケティング方針が明確になっていないことが原因であるケースが少なくないのです。

担当者を採用することはスタート地点です。

大切なのは、
・何のためにマーケティングを行うのか
・どの媒体を使うのか
・どれだけの成果を目指すのか
を経営陣が明確にし、担当者と共有することです。

マーケティングは担当者だけの仕事ではありません。事務所の未来をつくる経営課題です。
だからこそ、まずは「担当者に何をやってもらうのか」を明確にするところから始めてみてはいかがでしょうか。
【著者プロフィール】太田亮児(おおたりょうじ)|合資会社オオタキカク 代表
税理士・会計事務所の営業、マーケティング支援を行う。起業前は東京都内にある税理士法人に勤務してマーケティング業務を専任で手掛けた。2005年にオオタキカクを設立して独立。税理士事務所の個性を活かし各事務所の強みを磨き上げオーダーメイド式でマーケティングの仕組みを作り上げるサポートを行う。2010年に「税理士・会計事務所の儲かるしかけ」を同文館出版より出版し、税理士業界に特化したサービスを展開している。税理士向けの専門紙である税理士新聞(NP通信社発行)への連載記事を手掛けていたこともある。