“評判は見えないもの”ではなくなった

目次

  • 税理士事務所にも必要になってきたオンラインレピュテーションマネジメントという視点
  • 良い仕事をしていれば大丈夫、だけでは足りなくなってきた
  • 評判は、放っておいても自然に管理されない
  • ORMは“評判操作”ではなく“信頼の見える化”
  • 税理士業界ではまだ普及していない、だからこそ差がつく
  • 良い評判をつくるのではなく、良い評判が伝わる状態をつくる
  • これからは“評判を管理する事務所”が強くなる
  • “見えない信頼”を、“見える信頼”へ

税理士事務所にも必要になってきたオンラインレピュテーションマネジメントという視点

オンラインレピュテーションマネジメント
オンラインレピュテーションマネジメント(ORM)という考え方を耳にしたことはありますか?これは、インターネット上の評判を管理し、改善していく手法のことです。

少し前までは、事務所に対する評価や印象というものは、紹介者の一言や、顧問先同士の口コミなど、どちらかと言えば見えにくいものでした。

ところが今は違います。検索結果、口コミ、レビュー、SNS、比較サイト、ホームページの発信内容。さまざまな場所に、事務所に対する印象や評価が残り、見える時代になってきました。
つまり、これまで可視化されにくかったユーザーの声や評判が、少しずつ“見える情報”として蓄積されるようになってきたということです。
そしてこの変化は、税理士業界にとっても無関係ではありません。

良い仕事をしていれば大丈夫、だけでは足りなくなってきた

税理士・会計事務所の世界では、「しっかり仕事をしていれば、いずれ評価される」という感覚が今も根強くあります。もちろん、それ自体は大変すばらしい考えです。実際、実務の質は最も大切です。ただ、今の時代はそれに加えて、どう見られているか?どんな印象で認識されているか?も、事務所選びに大きな影響を与えるようになっています。

顧問先候補や採用候補者は、紹介を受けたとしても、そのまま問い合わせするとは限りません。多くの場合、まず検索します。
事務所名を調べる。
代表者名を調べる。
ホームページを見る。
口コミやレビューを見る。
SNSや発信内容を確認する。

その過程で、「ここは安心できそうだ」と思うこともあれば、逆に「少しわかりにくい」「情報が少なくて不安だ」と感じることもあります。つまり、実際の評判だけでなく、オンライン上でどう見えているかも、信頼形成の入口になることがあるのです。

評判は、放っておいても自然に管理されない

ここで重要なのは、評判というものは「悪いことをしなければ大丈夫」というほど単純ではない、ということです。なぜなら、オンライン上の印象は、積極的に整えなければ、意図しない形で決まってしまうからです。

たとえば、
・ホームページが古いまま更新されていない
・何を強みにしている事務所なのかが伝わらない
・代表者の考え方や人柄が見えない
・検索しても断片的な情報しか出てこない
・一見さんが気まぐれで書いた口コミだけが印象を左右している

こうした状態では、実際には良い仕事をしていても、その価値がオンライン上で十分に伝わりません。これは非常にもったいないことです。

評判は自然発生する部分もありますが、同時に、設計し、育て、整えていくものでもあります。それがORMの発想です。

ORMは“評判操作”ではなく“信頼の見える化”

オンラインレピュテーションマネジメントと聞くと、何か特別なテクニックや、印象操作のようなものを想像されるかもしれません。しかし本質は、そこではありません。

ORMとは、無理に良く見せることではなく、本来持っている信頼や価値を、オンライン上でも適切に伝わる状態にしていくことです。
たとえば、
・どんなお客様を支援しているのか
・どの分野に強みがあるのか
・どんな考え方で仕事をしているのか
・お客様からどのように見られているのか
・どんな情報発信を継続しているのか

こうしたものを丁寧に整えていくことで、評判は偶然に任せるものではなくなります。言い換えれば、ORMとは信頼の見える化の取り組みとも言えます。

税理士業界ではまだ普及していない、だからこそ差がつく

税理士業界では、この考え方はまだそこまで一般化していないように感じます。
多くの事務所は、評判を積極的に管理するというより、紹介や既存顧客との関係性の中で十分だと考えている部分があるかもしれません。それも一つの考え方です。

実際、紹介文化は今後も大切です。ただ一方で、時代は確実に変わっています。顧問先候補も、採用候補者も、「紹介されたから安心」ではなく、紹介されたあとに自分で調べて確認する行動が当たり前になっています。
そのとき、オンライン上の印象が整っている事務所と、そうでない事務所では、選ばれ方に差が出てきます。そして実際に、そこに気づいている一部の事務所は、すでに着実に進めています。

ホームページの見直し。
お客様の声の整備。
代表者や事務所の発信強化。
Googleビジネスプロフィールや検索対策の整備。
採用サイトやSNSの改善。

派手ではありませんが、こうした積み重ねが、数年後の「選ばれる理由」になっていくのだと思います。

良い評判をつくるのではなく、良い評判が伝わる状態をつくる

ここで大切なのは、無理に評判を“つくる”ことではありません。本来目指すべきは、すでにある良い評価や信頼が、きちんと伝わる状態をつくることです。税理士・会計事務所は、日々まじめに顧問先を支えています。 良い仕事をしている事務所は本当に多いと思います。しかし、その価値がオンライン上で見えなければ、知られないまま終わってしまうことがあります。これは、能力の問題ではなく、設計の問題です。

どんな言葉で伝えるのか。
どこに情報を置くのか。
どう継続するのか。
どう見つけてもらうのか。

この部分まで考えてはじめて、今の時代の信頼形成が完成するのではないでしょうか。

これからは“評判を管理する事務所”が強くなる

税理士業界では、まだORMの考え方は発展途上かもしれません。しかし、だからこそ先に取り組む事務所には大きな優位性があります。

今後は、単に仕事ができるだけでなく、その信頼がオンライン上でも確認できる事務所が、より選ばれやすくなっていくはずです。それは顧客獲得だけではありません。
採用にも影響します。
提携にも影響します。
紹介の受けやすさにも影響します。

つまり、オンライン上の評判は、単なる見え方の話ではなく、事務所経営そのものに関わるテーマになってきているのです。

“見えない信頼”を、“見える信頼”へ

オンラインレピュテーションマネジメントという言葉は、税理士業界ではまだなじみが薄いかもしれません。しかし、やっていることの本質はとてもシンプルです。それは、見えにくかった信頼や評判を、見える形に整えていくことです。
ユーザーの声や評判が見える時代になった今、事務所側もまた、自分たちがどう見られているかに無関心ではいられません。

まだ多くの事務所が本格的に取り組んでいない今だからこそ、気づいている一部の事務所は、静かに、しかし着実に前へ進んでいます。これからの税理士・会計事務所経営では、良い仕事をすることに加えて、その良さがきちんと伝わる状態を整えることが、ますます重要になっていきそうです。