税理士事務所のマーケティングヒント

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税理士先生の多くは非常に勉強熱心でいらっしゃいます。
内容によっては私などよりも先生のほうがお詳しい。
そういうことも少なくありません。

例えば、「○○税理士法人のやり方ってどう思いますか?」とか、
「△△先生のところの戦略ってどう思いますか?」。
あるいは「◆◆事務所の手法はうちの地域でも通用しますか」など。

この手の質問は実に多いです。

先生方はこれらの情報をどこで仕入れてこられるかというと、
税理士先生向けのセミナーや勉強会で仕入れてこられます。

何々をやって顧客拡大!というものに振り回されていませんか?

実はこういうものに過敏に反応をしすぎてしまうことで、
事務所の戦略が全く定まらないという事態に陥ってしまっている先生は多いです。

正直なところ、私は有名どころの他事務所が実践しているマーケティング戦略には余り関心がありません。

と、申しますか、外から見ただけでは深い部分での戦略などは決してわからない。
ということを知っていますから、あまりそういう情報に振り回されません。

成功をしている事務所は「やるべきことをやったから」成功をしたのであって、
方向性が正しいとか、戦略的な決定だけで成功をしたわけではないのです。

戦略的な決定は大切。しかしそれを実現するのは戦術。

どちらがより重要かという話ではなく、
どちらも重要です。

そして、会計業界においてはことさら「戦略」の重要性にのみ目が行きがちです。

すなわち、低価格戦略なのか業種特化戦略なのか、高付加価値戦略、あるいはコンサルティング戦略なのかなどです。
多くのセミナーで語られていることはこの戦略性の部分です。

そして、この戦略性の部分だけを聞いてそれをやろうとすると、全く出来ないということに気が付きます。
そうです。優れた戦略は優れた戦術の積み重ねがなければ実現することが無いのです。

例えば、お城を建てるとしましょう。

お城を建てる!

という戦略的な決定はその国の偉い人が決めることです。
君主とか国王とかとにかく偉い人が決めます。

城を建てることが決まったら次はどうなるでしょう。
実際の実務の流れはわかりませんが、城を建てたことがある人とか、
建築、建造に造詣の深い人を招いて場所とか規模とか必要な資材とか。

そういうことを決めていくのでしょうか。
言葉を変えるとコンサルティングを受けるような感じでしょうか。
そして、「それ」をやるのは君主とか国王の仕事ではないということはお分かりいただけると思います。

さらに進むと、実際に城を建てるためには人が動きます。
建造物の土台の部分にはこの素材が適しているとか、
この木材はこんな感じに加工しないと壊れやすいとか、
そういうノウハウを持ち寄りながら最高のものを仕上げていきます。

こういうノウハウは設計士の役割ではないでしょう。
ましてや君主や国王の仕事でもありません。
しかし、実務としては確実に必要となるものです。
これが抜けたら絶対に城は出来ません。

城を建てよう!

と決定をしたら後は勝手に知らないうちに城が出来上がっていた。
そぉんなファンタジーなことは絶対に起きません。

何が言いたいかというと、
先生方の多くが参考にされるのは「他国の君主や国王が話す城を作るという戦略」
に関するお話なのです。

もちろんそれはそれで有益な情報ではありますし、
参考となることも多いでしょう。

しかしながら、
その先の「じゃぁ具体的にどのようにして城を建てるか」というところは、
すっぽりと抜け落ちてしまうわけです。

ですから、「○○税理士法人のやり方ってどう思いますか?」とか、
「△△先生のところの戦略ってどう思いますか?」とか、
「◆◆事務所の手法はうちの地域でも通用しますか」といった質問が出てくるわけです。

現場への視点が抜けてしまうとこういうことになってしまいます。
言うは易し行うは難し。ではありますが。
【著者プロフィール】太田亮児(おおたりょうじ)|合資会社オオタキカク 代表
税理士・会計事務所の営業、マーケティング支援を行う。起業前は東京都内にある税理士法人に勤務してマーケティング業務を専任で手掛けた。2005年にオオタキカクを設立して独立。税理士事務所の個性を活かし各事務所の強みを磨き上げオーダーメイド式でマーケティングの仕組みを作り上げるサポートを行う。2010年に「税理士・会計事務所の儲かるしかけ」を同文館出版より出版し、税理士業界に特化したサービスを展開している。税理士向けの専門紙である税理士新聞(NP通信社発行)への連載記事を手掛けていたこともある。