第20号 上下欲を同じくする者は勝つ(孫子)

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意味深長な漢字とカナの絶妙なバランスが、何故か心地よい。
中国の古典は中学生の頃に出会いました。良く読みはしましたが特別暗記をしたとか、何度も読み返して自分のものにしたとか、そこまでのものではありません。学校の図書室に「中国古典シリーズ」のようなコーナーがあって、順番に読んでいたら面白かった。といった程度のものです。しかし、故事名言集など目にすると、学生時代に意味も分からず良く読んでいた光景を思い出します。

ランチェスターの戦略は1914年。世界最古の兵法書 孫子は2500年前。
中学生の頃に出会った中国の古典。今となっては内容も覚えていませんし、そもそも読んでいた当時にどれだけ理解できていたかも怪しいですが、良く読みました。
「孫子」「墨子」「韓非子」「戦国策」「六韜三略」「礼記」など、シリーズ化された本を一冊一冊読み進めていた記憶があります。
中国古典の格言を見ると、昔よく読んだなぁ~と思い出します(これで全部身に付いていたら凄いことなのですが(笑))。ただ、そういった類の本を読んでいたこともあってか、子供のころから作戦とか、やる前にちゃんと考えて、みたいなことがクセのようになっている時があります。
マーケティングの世界で考えるとランチェスターの戦略の方が名前が知れ渡っています。私も社会人になってマーケティングのことを学び始めた時の教材はランチェスターの戦略からスタートでした。しかしながら兵法書として見てみると孫子というのはなんと2500年前のものというのだから驚きです。
ランチェスターの戦略を近代的な兵法書、孫子を昔の兵法書として考えた場合、同じ兵法書ではありますが一体何が違うのだろうか。ふとそんなことを考えました。念のため申し上げますと、私は兵法書研究家ではありませんので兵法書に書かれている内容を全て熟知しているわけでも、歴史に詳しいわけでもありません。間違っていても笑ってお許しいただければ幸いです。 ”私はこのように感じています”といったことをただ書いてみます。

ランチェスターの法則はとても科学的です。強者の戦略と弱者の戦略の違いについて色々とまとめられていて、数値化されている部分もあり、実に今風と申しますか、「中小企業の経営戦略」を考えるにはとても良い教材です。実際、販売戦略のバイブルと言われていたりもするそうです。
それに引き換え孫子はどうでしょうか。正直な所、孫子がどのような内容だったかなんて覚えていません。覚えていないのですが中国の古典全般に言えることは、とても心シビレる読み物であったということです。人間味にあふれているのです。こういう心構えだと国が滅びますよとか、昔こんな酷いことをやった人が居たけれど最終的には滅亡したよとか。そういった過激なものから、最初はダメだったけれどあきらめずにやり続けたら成功したよといった前向きなものまで、人間臭さをベースにした物語が延々と書き綴られているといったものでした。

「ビジネス」とか「マーケティング」として考えると、きっとランチェスターの戦略を学んだ方が良いのだと思います。弱者が強者に勝つための戦略がそこにはあります。しかし、「人間力」で考えた場合、中国古典ほど心シビレる教材は他には無いでしょう。中国古典の方がより精神論的なものが多いと言っても良いかもしれません。
「上下欲を同じくする者は勝つ」は孫子の中の一文です。国家戦略の基本ということだそうです。言葉で書くと当たり前で簡単なもののように見えますが、実際は大変なことです。マーケティングで成功するのには、ランチェスター戦略で言う所の「戦略」ももちろん大切で必要なことなのですが、より本質的な部分で考えると「上下欲を同じくする」といった言葉に則った人間の心の機微に触れる取り組みも見逃すことができません。

合資会社オオタキカク 代表 太田亮児
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