AIに向き合う時間が増えました

目次

  • 同じAIでも、使う人によって結果が違う
  • 「AIが何をしてくれるか」だけではない
  • 税理士事務所の仕事も同じではないか
  • AIは「答えを出す人」を増やした
  • AIによって専門家が不要になるのではない
  • これから重要なのは「AIを使える専門家」
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最近、AIに向き合う時間がかなり増えました。
朝、出社したら、まずAIを開いて指示を出す。
仕事の合間にもAIを使い、土日も気がつけばAIと向き合っています。

少し前までの私にとって、AIは文章を作ったり、調べものをしたりするための便利なツールという位置づけでした。ところが最近は、使い方がかなり変わってきました。独自のデータベースを作り込んだり、簡易的なプログラムを組んだり、業務の一部を自動化する仕組みを考えたり。

以前であれば、
「これは専門のプログラマーに頼まなければ無理だろう」
と思っていたようなことまで、AIを使うことで少しずつ形にできるようになってきました。AIによって、自分ができる仕事の範囲が広がっている。最近は、そんな感覚があります。

同じAIでも、使う人によって結果が違う

現在、あるプログラムをAIエンジニアと一緒に開発しています。そこで改めて感じたことがあります。 それは、
「同じAIを使っていても、使う人によって出てくるアウトプットがまったく違う」
ということです。

私もAIを使ってプログラムを作ることはできます。
何を作りたいのかを伝え、エラーが出ればAIに聞き、修正を繰り返していけば、それなりに動くものを作ることもできます。 ただ、AIエンジニアがAIを使っているところを見ると、やはり違います。そもそもの設計の仕方が違う。指示の出し方が違う。出てきた回答の良し悪しを判断する基準も違う。

AIが出した答えをそのまま使うのではなく、
「ここはおかしい」
「この方法では後で問題になる」
「もっとこういう構成にした方がよい」
と判断しながら使っています。

当然、出来上がるものも違います。AIそのものは同じです。それでも結果が変わる。この経験から、AIについて一つ大きな勘違いをしてはいけないと思うようになりました。

「AIが何をしてくれるか」だけではない

AIが進化すると、
「AIを使えば誰でも同じことができるようになる」
と思われがちです。

確かに、ある程度まではその通りです。
これまで専門家に頼まなければできなかったことを、自分で試せるようになりました。

文章も作れる。
デザインの案も出せる。
プログラムも書ける。
調査もできる。
できることのハードルは、確実に下がっています。

ただし、
「できること」と
「質の高いものを作ること」
は別の話です。
AIが答えを出してくれるからこそ、その答えが正しいのか、適切なのかを判断する力が、以前より重要になっているように思います。

つまり、
「AIが何をしてくれるか」
以上に、
「誰が、どんな知識や経験を持ってAIを使うか」
が重要になってきているのではないでしょうか。

税理士事務所の仕事も同じではないか

これは、税理士事務所の仕事にもそのまま当てはまると思います。今は、財務や税務の専門知識がなくても、AIに質問をすれば答えは返ってきます。

例えば、
「この経費は損金になりますか」
「この取引には消費税がかかりますか」
「この場合、どのような節税方法がありますか」
と聞けば、それらしい答えを出してくれます。しかも、説明もかなり分かりやすい。

一般の方から見れば、
「これなら税理士に聞かなくてもいいのではないか」
と思う場面も増えていくでしょう。

しかし、本当に難しいのは、その先です。
AIが出した答えが正しいのか。
前提条件は合っているのか。
例外規定を見落としていないか。
その会社の取引実態に当てはめて問題がないのか。

税務だけでなく、資金繰りや経営への影響まで考えた場合、本当にその選択がよいのか。ここまで判断するには、やはり専門知識や経験が必要です。

AIは「答えを出す人」を増やした

以前は、専門知識を持っている人しか答えを出せなかった分野でも、AIによって多くの人が答えを出せるようになりました。 これは大きな変化だと思います。

ただ、同時に、
「答えを出せること」と
「正しい判断ができること」
の違いも、より大きくなっていくのではないでしょうか。

AIはとても優秀です。しかし、前提となる情報が違えば答えも変わります。聞き方によっても答えは変わります。そして、もっともらしい文章で、間違った内容を回答することもあります。だからこそ、専門家が使う意味があるのだと思います。

AIによって専門家が不要になるのではない

AIが登場した頃から、
「税理士の仕事はAIに奪われる」
といった話はいたるところで出てきています。

確かに、単純な作業や定型的な回答については、AIに置き換わっていくものも多いと思います。
一方で、最近の私は少し違う見方をするようになりました。AIが専門家を不要にするというより、専門家がAIを使うことで、専門家としての能力をさらに拡張できる。そう考えた方が、実態に近いのではないかと思っています。

これまで1時間かかっていた調査を、AIを使って短時間で整理する。大量の資料の中から論点を抽出する。複数の選択肢を比較し、検討材料を作る。文章や資料のたたき台を作り、そのうえで専門家が内容を確認する。AIに任せられる部分を任せることで、人間はより重要な判断や相談に時間を使えるようになります。

これから重要なのは「AIを使える専門家」

これからは、
「AIを使うか、使わないか」
という話ではなくなっていくのだと思います。
ほとんどの仕事で、何らかの形でAIを使うことが当たり前になるでしょう。

そのとき差がつくのは、AIを使っているかどうかではなく、
「専門知識を持った人が、AIをどのように使っているか」
なのではないでしょうか。

プログラマーがAIを使えば、より高度なプログラムを作ることができる。デザイナーがAIを使えば、より質の高いデザインを生み出すことができる。そして税理士がAIを使えば、より早く、より多くの情報を整理しながら、そのうえで専門家として判断することができる。

AIによって専門家の価値がなくなるのではなく、むしろ、AIを使いこなせる専門家と、そうでない専門家との差が大きくなっていく。

最近、AIエンジニアと一緒に仕事をしながら、そんなことを強く感じています。AIは、それだけで何でも解決してくれる魔法の道具ではありません。使う人が持っている知識や経験を、さらに広げてくれる道具なのだと思います。だからこそ、これから専門家に求められるのは、「AIに仕事を奪われないようにすること」ではなく、自分の専門性とAIを、どう組み合わせるかを考えること。そこに、これからの専門家の大きな可能性があるのではないでしょうか。
著者プロフィール
太田亮児
太田 亮児 おおた りょうじ

合資会社オオタキカク 代表

税理士・会計事務所専門の営業・マーケティング支援を行う。前職の税理士法人ではマーケティングの専任担当者を務め、同法人が3年間で1,500社の見込み客を発掘し、300件の新規法人顧問先を獲得する過程を現場で経験した。
2005年にオオタキカクを設立。各事務所の個性や強みを引き出す、オーダーメイド型の仕組みづくりを支援している。

著書に『税理士・会計事務所の儲かるしかけ』(同文舘出版)。専門紙『税理士新聞』での連載や取材執筆も行うなど、業界に向けた情報発信にも力を入れている。

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