会計事務所の求人と営業についての考察

随所で耳にする求人難の時代感

Hardship
最近、会計事務所の求人難について随所で耳にする機会が増えました。

数年前であれば求人を出せば有資格者であったり、科目合格者、実務経験者からの応募が寄せられたものが、最近ではさっぱりである。

といったお話を聞くのです。

私は会計事務所での人事や採用の経験がありませんので、過去との比較はできないのですが、どの事務所でも同じような感触ですのでそういうことなのだろうと感じます。

応募者が減っていると言うことについては色々なことが考えられます。

大手税理士法人さんがたくさん採用をしているから、会計業界で仕事をすることに魅力が無くなってきているから、少子高齢化に伴う人材不足化。

などが挙げられます。

会計事務所の求人難と顧客獲得難の類似点

今まで知り合いの紹介に頼っていたとか、ハローワークや特定の会計求人サイトからの紹介に頼っていたという事務所はその変化に大いに悩まされています。

実はこの悩みというのは、顧問先拡大、営業上の悩みと類似する点があります。

即ち、顧客獲得の営業は紹介に頼っていた、ホームページからの自然な問合せに頼っていたという事務所が多く、今は昔ほど問合せが得られなくなってきているという状況です。

要するに同じやり方では通用しなくなってしまった。
環境が変わってしまったのです。
採用について真剣にお考えの事務所は、求人専用のサイトを立ち上げたり、今までの求人サイト募集の種類を増やしたり、 Facebookなどのソーシャルメディアを駆使したりなどをして、今までの取り組みにプラスアルファで求人募集をかけています。

ホームページ上の求人募集ページを見ても、業務内容と条件のみの記載にとどまらず、職場の風景や事務所の外観、スタッフの写真などを用いて事務所の雰囲気を伝える努力をしたり、条件面についても残業手当や年間の休日、各種保障制度などの記載など、様々な側面から配慮をしていらっしゃいます。

求人に向けた記載内容の工夫をすることは、営業上の記載内容の工夫をすることと似ています。

税務顧問料金の金額と決算料の記載にとどまっていたものが従来のものとしたら、顧問料金の内訳や詳細なサービス内容、担当者からの一言など、そのサービスが如何に良いものなのかを伝えるように工夫をします。

そう考えると、営業上のPRの仕方と求人用のPRの仕方には共通点が有り、それは大きく異なるものでは有りません。

営業用の事務所パンフレットは将来の顧問先となりうる方に向けた事務所のPR文書ですし、求人用の事務所パンフレットは事務所の求職者に向けた事務所のPR文書となります。

ポイントとなるのは、それぞれの用途に分けたツールを用意すると言う点です。

ホームページであれば営業用のページと求人用のページは別に存在しています。
相続用のページと法人設立用のページが分かれているようにです。

WEBページが分かれているということは、伝えるべきことがそれぞれ異なると言うことです。
つまり、紙媒体(パンフレットやチラシなど)についても分けるべきでしょう。
実はこういった補完ツールの整備が、会計業界の場合抜けてしまっているケースが多く有ります。

伝えたいことは似ていても、伝え方が異なるのです。
益々じっくりと考えて個々に戦略を練り上げていく必要があります。

【著者プロフィール】太田亮児(おおたりょうじ)|合資会社オオタキカク 代表
税理士・会計事務所の営業、マーケティング支援を行う。起業前は東京都内にある税理士法人に勤務してマーケティング業務を専任で手掛けた。2005年にオオタキカクを設立して独立。税理士事務所の個性を活かし各事務所の強みを磨き上げオーダーメイド式でマーケティングの仕組みを作り上げるサポートを行う。2010年に「税理士・会計事務所の儲かるしかけ」を同文館出版より出版し、税理士業界に特化したサービスを展開している。税理士向けの専門紙である税理士新聞(NP通信社発行)への連載記事を手掛けていたこともある。