税理士事務所の広告_顧問料○か月分無料について

新設法人DMなどでよくある広告手法

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今回のテーマは少し過激と申しますか、
「戦っているなぁ~」といった感があるPR方法です。

今回の内容は、
特定の事務所様を非難するようなものではございません。
手法そのものにダメ出しをしたりするものでもありませんので、
事前にご承知おき願います。

例えば、当事務所と顧問契約をすれば半年間無料!とか、
3か月間無料!などといった表現をすることが新設法人DMの場合ときどき見かけます。

自由競争というのは凄いですね。
税理士法の広告規制が撤廃になったことで10年以上たちますが、
正直、私の感覚で申しますとこの業界は何でも有り。
の様相を呈してきております。

税理士法の広告規制ぎりぎりというものも中にはありますし、
広い意味での比較広告ぎりぎりというものもあります。
個人的に争う広告は残念な気持になる事が多いです。

難しいところですね。

で、この0円の広告。
私の考えで申し上げると、
客層が悪くなるので関与事務所様にはお勧めしていません。

とにかく問い合わせが欲しい、電話が鳴らないと嫌だ。
というケースで尚且つ、所長先生が営業回りをせずに、
営業の専担者が事務所にいらっしゃるような場合には効果的かもしれませんが。

税務会計や節税に関する業務が報酬無料で提供というのは、
私はよくないことであると考えています。
(無料相談と言うのは別です)

私たちの身の回りにもある無料なこと

少し視点を変えてみましょう。

無料で試食をするコーナーがあると思います。 
スーパーなどに行くとよくある光景ですね。 

あれと似たようなもので、時々近くの薬局などでドリンク剤の試供品を配っていたり、 
路上でも新製品ジュースの配布をしていたりすることがあると思います。 

良く見ているとドリンク剤の試供品の場合、それを手に取る人は割合にすると5分5分でしょうか。 
あるいはもっと低いでしょうか。たぶんもっと低いですね。
正確にはわかりませんが、結構な割合で素通りする人が居ます。 

何故でしょうか。

それは試供品を渡した直ぐ後に、 「いかがですかぁ?」ときれいなお姉さんに勧められるからです。
せっかく無料で貰っても、すぐに営業をされてしまうことがわかっているので、それが嫌だから貰わない。 

 というロジックが出来上がります。 

では、路上で配っている新製品ジュースの場合はどうでしょうか。 
ブースのようなものを構えて「どうぞ~」とやり始めでもしたら、 一気に殺到。 

黒山の人だかりです。 

天気なども影響するでしょうがものの数分で在庫は無くなります。 
本当にわらわらわら~と人が集まっていきます。 
中には飲んで並びなおしてみたいなことをする人も出てきます。 

これは、貰って飲んでも別にその後売り込まれないから安心。 

というロジックがあるから生じる事態です。 

サービスや商品を無料にするということ

さて、「集客」という事象だけを考えると、
裏も表もない、真実の無料を押し出した方が人は集まります。(当然ですね)

先の例であれば、
ジュースを純粋にあげます。というようなものです。

あげても住所や名前を聞いたりしませんし、
「これ買いませんか?といったセールスもかかりません。
結果、人は一杯やってきます。ジュース目当てに。

では、セールス込みのドリンク剤であればどうでしょうか。
試供品だけ貰います。というハートの強い方もいらっしゃると思いますが、
試供品をいただくことイコール、なにがしかのセールスは受ける。

ということを前提としてゴクゴクと飲み干すことになります。

さて、それでは会計事務所の顧問サービスはどうでしょうか。
経営者がこの数か月無料というものを見て「やったぜ!」と思うかどうかです。

「やったぜ!」と思う社長さんもいらっしゃるでしょうが、
そうでない社長さんもいらっしゃると思います。

何か月間か無料であるというのは、お金のことだけで考えると確かに魅力的です。
ですが、試供品などのモノとはわけが違います。
無料期間が終わったら顧問契約というのが容易に想像できるからです。

この「容易に想像できる」というところがポイントです。
先の無料ジュース配布とドリンク剤の試供品配布の違いです。

人は「売り込まれる前提」になると極端に「貰わなくなる」という現実があるということがあります。

ストレスにならない取り組み方を

無料期間があるから契約数が伸びるのか。
無料期間関係なく契約数が伸びるのか。
あるいは無料期間がないから契約数が伸びないのか。

ここのジャッジは実に難しい。

結論的には、
最後の契約段階で「ただ単に無料期間であることだけ目的の人」を、
営業シーンで排除することが出来ればアリかもしれません。

契約段階で顧問契約が前提で無料期間サービスが受けられるということで
お付き合いが始まるのであれば有効。

その部分のコミットが得られない場合は無効。
そういう線引きが出来ているかどうかが分かれ目となりそうです。

もちろん契約書にしっかりと明記して、という形での取り組みも考えられますが、
世の中にはどうしても無料だけのところだけを欲する人も多いので、
そういった人と関わることが大きなストレスになると言う事もあります。

嫌な思いをすることが多いのであれば、
はじめからそういう案内の仕方はしないほうが、私は健康的だと思います。

逆に嫌な思いなどしたことがないということであれば、
その手法は間違っていないのだといえるかもしれません。
【著者プロフィール】太田亮児(おおたりょうじ)|合資会社オオタキカク 代表
税理士・会計事務所の営業、マーケティング支援を行う。起業前は東京都内にある税理士法人に勤務してマーケティング業務を専任で手掛けた。2005年にオオタキカクを設立して独立。税理士事務所の個性を活かし各事務所の強みを磨き上げオーダーメイド式でマーケティングの仕組みを作り上げるサポートを行う。2010年に「税理士・会計事務所の儲かるしかけ」を同文館出版より出版し、税理士業界に特化したサービスを展開している。税理士向けの専門紙である税理士新聞(NP通信社発行)への連載記事を手掛けていたこともある。